[Solve It!]の特徴

 

1 どれだけ水に溶けるのかが簡単に実験できる

 

 ある温度において固体物質は何グラム溶けるのか、また、ある温度と圧力の下で気体物質は何ミリリットル(標準状態)溶けるのかがすぐにシミュレート実験ができる。

 本ソフトには、中学・高等学校であつかう122の固体物質(液体物質臭素を含む)と24の気体物質が収録されている。溶解量は難溶性の物質(ふつう沈殿をつくるもの)から易溶性の物質まで非常に違っており、また、結晶水をもつ多くの結晶は複雑な溶解度曲線をもつ、など自然の深みが自然に伝えられる。

 

2 どんな物質でも溶ける量が比較ができる

 

 現在、固体物質の溶解度は質量表示であり気体の溶解度は体積表示であるが、本ソフトでは質量モル濃度の単位での溶解度表示をもつので、固体物質と気体物質であっても溶解量が容易に比較できる。

 

3 できた溶液の状態がみえる

 

 溶ける量への関心もさることながら、溶けて生成した溶液の状態への興味を喚起する。実際に溶解した粒子(分子やイオン)と溶媒分子たる水分子の拡散状態がつねに表示される。それゆえ、溶解とは物質が構成粒子に分かれて水中に拡散することであり、できた溶液は均一かつ透明であることが容易に理解される。

 

4 最先端の溶液の研究が紹介される

 

 溶液の最先端の研究は、MD法(分子動力学法)によって進められている。スーパーコンピュータを使ったシミュレーションによって、溶液中の溶媒・溶質粒子の熱運動や、溶解する粒子の動き、再結晶する粒子の動きが初めて一般に公開される。

 また、溶液に関する研究史をもち、溶液研究への誘いがなされる。

 

5 生徒の課題研究や自習にも最適なチュートリアルソフト

 

 日常身近にある溶解現象から溶解現象の本質まで、動画・静止画を使って体系的にわかりやすく解説している。また、収録した物質の物性(化合物・単体のモル質量、融点、沸点、密度)と結晶構造をもち、結晶構造は3Dグラフィックスで表示する。さらに、溶解現象に関する76の用語解説があるほか、質量モル濃度の計算を無理なく誘導するので濃度計算が自然と身につく。

 それゆえ、本ソフトは一斉授業の補助教材であるばかりでなく生徒の課題研究・自習教材として大変有効である。

 

 

[Solve It!]の教育的ねらい

 

 これまでの溶解度の学習において、主に溶解温度と溶解質量だけが扱われてきたので、この分野は単なる計算問題として片付けられてきた嫌いがあります。それゆえ、溶解と溶液という化学と生物に不可欠な分野が、多くの誤解や不明快な点を残したまま放置されてきたといえないでしょうか。

 そこで、本ソフトの作成にあたって意識した生徒の致命的な誤解のいくつかを取り上げ、その誤解を解くために本ソフトはどのような特徴を持っているかを紹介します。

 

1 砂糖は食塩よりたくさん溶けるという誤解

     −溶解量は物質量で比べてこそ意味をもつ

 

 食塩(塩化ナトリウム)と砂糖(ショ糖)の25℃における溶解度は、水100gにそれぞれ35.2g、 204.6gと砂糖が大きいから、砂糖の方がたくさん溶けるという誤解が生じています。日常生活ではこのような質量比較も重要ですが、化学では分子量(化学式量)大きい砂糖はたくさん溶けることを意味するだけで、実際水分子に溶けた粒子数としてはどちらがたくさん溶けたのかが不明です。食塩と砂糖の溶けた物質量を求めると、それぞれ0.61モル、0.60モルですから、食塩の方が多く溶けこんでいるのです。ましてや食塩は電離しているのですから、溶解粒子数は食塩の方が大きいわけです。

 本ソフトでは、溶解量を従来の溶解質量(固体物質の場合)や溶解体積(気体物質の場合)で扱いますが、質量モル濃度でも表示しますので化学的に意味をもつ溶解量の比較が容易にできます。また、質量モル濃度の単位系によって、固体物質と気体物質の溶解量も同時に比較可能となります。

 

2 固体や気体が溶けるという誤解

     −溶けるとは構成粒子が水分子中に拡散することだ

 

 固体の溶解度・気体の溶解度と略称されるので、固体は固体という状態を保持したまま溶解し、気体は気体という状態を保持したまま溶解するという誤解があります。固体の場合は食塩や砂糖を溶かした経験を有するので誤解の程度も少ないのですが、とくに気体の場合は溶解度を体積で表示するので、溶液の体積は気体の体積分(気体分子自身の大きさではない)大きくなると考えているわけです。たとえば、二酸化炭素の溶解度は1.05(ml/HO 1ml)も溶けるので、溶液の体積は2.05mlに倍増するというように、です。

 固体や気体の溶解度という用語にかえて、固体物質の溶解度・気体物質の溶解度と丁寧に表現するべきですが、なにより重要なことは、溶解とは物質を構成する粒子(分子やイオン)が水分子と溶媒和して拡散する現象であることを押さえることです。コロイド溶液とは異なり、溶液は水分子と同程度の大きさの粒子の拡散だからこそ、均一で透明となるわけです。

 それゆえ、本ソフトの優れて教育的な特徴は、実際に溶解している粒子の状態をつねに表示するようにしているところにあります。

3 溶解度と稀薄溶液の性質には関連がないという誤解

     −水分子数と溶解粒子数の比率こそが溶液の大切なイメージ

 

 溶解度は飽和溶液であり濃厚溶液なので、溶解度と稀薄溶液の性質とを同列に論じることはできません。そこで、濃厚溶液の分野たる溶解度と稀薄溶液の性質の分野とは、何の関連もなく別個の現象と捉えてしまっています。

 稀薄溶液では多くの水分子に取り囲まれた溶解粒子はそれぞれほぼ独立の存在し、相互作用を及ぼさないと考えて差し支えがないので、水分子と溶解粒子との相互作用だけを考えればよいわけです。したがって、凝固点降下・沸点上昇や浸透圧などの稀薄溶液の性質は、溶けている溶解粒子数に比例します。他方、濃厚溶液では水分子数が少なくて溶解粒子が多く存在します。そこで、溶解粒子どうしは近接することになり、溶解粒子間にも相互作用が生じるから、当然にも単純な比例関係にはなりません。

 このように考えれば、濃厚溶液と稀薄溶液の違いとはいっても、当然のように溶液の水分子数と溶解粒子数の比率(つまり質量モル濃度)の異なる溶液の状態の違いであること、つまり、濃厚溶液も稀薄溶液も濃度という共通の土台で考えられるようになるし、考えなければなりません。

 しかし、このとき単に濃度の違いを強調するだけでは、溶液の状態の違いが伝わりません。溶液の濃度とは、水分子数と溶解粒子数の比率だというイメージをつねに喚起し続ける必要があります。本ソフトは、溶解した粒子数と溶媒水分子数の比率がつねにビジュアルに表示されて、溶液のイメージがおのずと形づけられるように工夫してあります。

 

4 数値だけを扱かっていると自然は平板化してしまう

     −自然の深みたる指数的量関係を実感する

 

 溶解度でよく扱われる固体物質は硝酸カリウムです。また、難溶性の塩つまりふつう沈殿が生じて溶けないと考えられている物質は塩化銀がポピュラーです。25℃における硝酸カリウムと塩化銀の溶解度は、それぞれ3.8(mol/kg)、1.3×10−4(mol/kg)であり、硝酸ナトリウムの方が圧倒的に溶け、塩化銀はほとんど溶けないことはすぐに了解されます。

 しかし、溶けないはずの塩化銀であっても、溶解平衡(溶解度積)を学ぶ段階では溶ける量を論じますので、この指数的に大きく異なる桁違いが忘れ去られ、数値の違いだけの平板化された量に変質してしまいます。平板化された量的世界は、いわば専門家にとって必須な対数的尺度の世界に近いといえるでしょう。しかし、一般には対数的尺度より指数的尺度の素朴な自然の深みこそ知るべきものではありませんか。

 本ソフトでは、固体物質の溶解質量を1桁、2桁・・・と変化させることができます。それにともない、溶解粒子数が飛躍的に変化することが一目瞭然に理解できます。また、溶解度曲線も、指数的に変化するグラフ表示をもっています。それゆえ、指数的変化は操作する行為となり、その結果は画面上にビジュアルに変化して表示されるようなっています。この指数的尺度の素朴な自然は、コンピュータソフトによってはじめて実感可能となるものです。  

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